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オーディオは宗教ではない、生き方の指針だ 門松を爆破せよ
Posted by - 2024.04.27,Sat
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Posted by Siina daioujou - 2010.08.29,Sun
エージングという言葉がある、これは諸説様々だが「慣れる」という意味であろうと思う

オーディオはこのエージングと呼ばれる「慣らし」があって始めて完全になると言われているが
たとえ機材がその環境に「慣れて」本来の性能を発揮したとしても

聞く側である人間が「慣れていない」のでは意味がまるでない

どんなに高額のすばらしい機材をいくつも得たとしても
使う側の人間がエイジングされていなければ宝の持ち腐れである

オーディオはたとえどんな願い、希望を人から向けられても
けして妄想に答えることはない、オーディオは使われる道具にすぎないからだ



孤独のオーディオ 4話




尾張、現在の愛知県味噌市にほとんど身の着のままト・ヨブレは降り立つ

学校に現れた悪魔のような面をした人身売買官に脅しつけられ
アスランの傭兵になるかのような面持ちで自ら赤紙にサインをした彼の荷物は財布だけだった

現在も続くこのマンハントによって刈り取られた未来の歯車候補達は
見渡す限りの畑しかない土地に投げ出され、監獄のごとき厚い壁と正門に守られた
訓練施設へ投げ込まれ、2年の月日を送るのだ


あまりの事態の急変ぶりに思考のおいつかなかったト・ヨブレが
身の着のままであったことを咎める者はそこにはいない、周り中そんな食い詰めた連中ばかりだった

口に出すことも憚られる環境での生活は苦痛の一言である
飢えと食中毒との狭間に生きた当時、しかし生きる活力に満ち溢れ


具体的には若いエロ・ゲマー達は少々過酷な環境でも生存するということだ



収監から一月もたてば、流石に部屋に物がないことを苦痛に感じるだろう

ト・ヨブレが実家に送ってくれるように頼んだのは
当時、米と味噌汁しか危険なく食えるものがなかった状態ですら

PCとミニコンポであった

かつて電撃PSを買い集めていたト・ヨブレは、しっかりオ・タクーになっていた




寮生活の大きな問題は部屋の狭さと壁の薄さである

レオパレスどころか殴れば穴が開きそうな薄い壁に向かって音楽を流そうものなら
低音どころかメロディが聞き取れる有様だ

実家のマンションのように壁と床がコンクリートでしっかり作ってある訳もなく
当然出せる音量にも大きな制限がついた

ヴォリュームを絞らなくてはいけない、という経験はト・ヨブレにとって初めてのことだ

そんな苦労を、どういうわけか同時に拉致されていた義理の兄弟に語って聞かせた




兄弟、これはゆゆしいことだ音楽がまるで聞けない
それに隣の部屋から小意気なラップが聞こえてくるのだ、それもどうやら本人だぞ

「それは僕も感じているよ兄弟
なにせロリ・アニーメを見ようにも隣からオ・ナンニの様子が実況中継だ、心が折れる」

壁がまるで意味をなさない、これではエロ・ゲーどころのか黄昏もできない


「しかしまだ僕達兄弟はいい、ここはこれでも一番いい部屋らしいから」

別寮の連中は二人部屋だ、お互いオ・タクーならいいが一般市民とセットになった日には

「悪夢の日々が僕達を襲うだろう、すぐにでも脱走しそうだ」





プライベートがダンボール並の壁で覆われただけの2年間
ト・ヨブレのオーディオ生活は停滞の極みにあった

スピーカーで音が流せないのだから、それは仕方のないことだったが
この圧迫された環境で学んだ大事なことが一つある

低い音は壁を貫通しやすく、高い音はそうではないということだ


音が振動でどうのこうのといった知識は当然当時のト・ヨブレには無い
ただ 聞こえてくるものが全て
隣から聞こえる小意気なラップよりも、映画の唸り音のほうが頭にきたというだけの話だ



オーディオをスピーカーでする

それは環境に最も左右される行為といっても過言ではない
音声を空間そのものを利用して表現するオーディオにとって

薄い壁やわらかい床がどれだけ悪影響を及ぼすか
どれだけ地域住民の皆様にご迷惑をおかけすることになるのか

オーディオは棲家に依存する、これはどうとりつくろっても揺るがしがたい事実なのだ

当然それらを最大限工夫し、最良を目指すこともオーディオの技ではある
事実ト・ヨブレの現在の棲家は6.5畳間であるが立派にオーオタの部屋である

しかし、たとえどんな使いこなしの技術の粋をこらしたとしても
建物が持つ物理的限界を超えることはできない


多くのオーオタが棲家を探すとき
壁や床を実に丹念に叩いている光景は、非常によくみるものだが

その拳で叩く小さな音には、これら苦い経験の一つ一つが詰まっている




そんな彼が当時対抗策として考えた策の一つがヘッドフォンだったが
メガネ族のト・ヨブレはそれを装備すれば苦痛を浴びるだけである

それにスピーカーから再生される、音が広がる様を知った後では
今更イヤホン同様、耳に直接音を流し込むことは憚られた

結局隣人の居ない時間を利用するという逼塞した生活が続くのである






そんな米と味噌だけの生活に慣れ始めた頃のある日
義兄弟と味噌市の中央区に出向いたト・ヨブレはオ・タクー問屋へ向かっていた

味噌市の人の海を掻き分けて電気街を歩く中、突然ポッカリ人の居ない空間に出る
そこには小汚い暖簾に、薄汚れたシャッターが半開きになった寂れた店

人が避けるようにしてその店先を通り過ぎていく中、ト・ヨブレは立ち止まった


店先に並んでいたのはどれも大きな直方体で
彼の目がそれを捉えた時何かは判らなかった、店頭の少しに奥に鎮座した巨大な家具のような物体

長年の使用感が染み付き、排気ガスにまみれ
人々の喧騒の中に埋もれながらも雄雄しいその姿は、今も思い出すことが出来る


ト・ヨブレはそのとき、疑問と興味を覚えつつもそれを知ろうとはしなかった

彼の興味は運命という名のエロ・ゲーに向いていたし

それが、スピーカーとは気づかなかったからだ



ト・ヨブレはそれに背を向けて歩き出した

その現物を目でみることができた唯一の機会であったと惜しむのは
立派なオーオタとなった頃の話である


その歴史を感じさせる巨体の持ち主は「オートグラフ」とよばれていた






用語解説



オートグラフ


英国オーディオメーカー「TANNOY」が1953年から製造した極大型のフロア型スピーカー
詳しい考察は様々なサイトにあるので割愛するが、信じがたいほどの巨大なスピーカーである

オーディオという存在にステレオという概念が存在する以前、モノラルサウンドの時代
スピーカーというものはすべからく巨大であった、これは当時の技術設計や概念では
十分な音声再生をするためには箱そのものを巨大化させるしか方法がなかったためである

スレテオに以降した後、とある革命的スピーカーの誕生から小型化の流れが加速する中でも
ハイ・オーディオとしての大型フロアタイプスピーカーはカタログの中に健在であった

オートグラフはその中でも異彩を放つ存在である

有名人が使用していたなど有名になる機会が多くあったためか
日本人オーオタにとって聞いたこともないのに音が神と安易に決め付けられやすい存在ではあるが
工場全焼による絶滅の危機とその奇跡の復活など
そのドラマチックなエピソードの数々は音楽性を抜きにしてもオーオタ達を魅了してやまない




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自己紹介:
広島某所在住、オーディオを趣味とする
部屋が音聞く・寝る以外の行為不能
ゴミ箱があれば部屋としての面目は立つ
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